「廉君、おはよう」
よし、今日は噛まずに言えた
『ああ、はよ…って、何があったの?』
優香の言う“大人っぽい”を春華なりに忠実に再現して
いつもより少し短いスカート
くるんと上に持ち上がったまつげ
プルプルの唇
ピンで右に多めに流した前髪
丁寧に内側に巻かれた肩までの髪
「ど、どうですか?」
そして、優香ちゃんに習った最終兵器
“上目使い”を廉君に向けてみた
そしたらなぜか
むすーっと昨日の不機嫌な顔に戻っていく
『だめ、春華にはまだ早い』
はぁ
一つため息をついて、廉は春華の口元をぬぐった
はみ出さずに綺麗にぬれていたグロスがみるみるうちに取れていく
乙女心に鈍いにもほどがある
春華の中の何かがさらさらと音を立てて崩れ落ちた瞬間だった
『誰に何を吹き込まれた?』
「…自分で考えました」
『なんで?』
「っそんなの…
自分の胸に手を当てて考えてみてくださいぃぃ〜!!」
春華の心のダムはついに決壊し
しょっぱい水と共に 流れ出た



