グイッ
突然引き寄せられた体
スローモーションのように黒い学ランが目に飛び込んでくる
抱きしめられてると言うのを認識したのは
神経が麻痺したように遅い速度だった
『春華…お前は今日から俺の女な』
耳元で囁くような声で呟かれる
くすぐったくて何だか変な感じ…
命令形のぶっきらぼうな言い方だけど
心地よい体温と
耳を澄ませば聞こえるとくとくと言う心臓の音が
私をあったかくさせる
これが
私と廉君との
小さな小さな始まりでした…
『…良くこんな街中でイチャイチャできるわね』
春華が心配でこっそりあとをつけてきた優香は
ゆっくりと大きなため息をつくと人ごみに紛れていった