エレベーターに乗り込むと
郁は素早く3階の
ボタンを押した。
指が細長くて
綺麗だなとか
そんな馬鹿な事も
考えられる位、
私は冷静だった。
ふたりきりの狭い
エレベーターに
不快感を感じる事もない。
さっきから掴まれている
手首も、まったく
嫌ではない。
会話がなくたって
自然と気まずさもなかった。
『ひとりぐらし?』
そんな中、
郁が沈黙を破った。
「うん、今年の春からね。」
『実家、遠いの?』
「ううん、電車ですぐ。」
『なんで「着いたよ、行こ。」
郁が何か言いかけたが
エレベーターは3階へと着いた。
今度は私が前を歩き
自分の部屋へと向かった。

