「行きはよかったんだ。 でも、温泉を出たころには真っ暗でさ。 見通しも悪くて、 急な下り坂だったから 慣れない山道を減速しながら走ってたんだよ。 でも、 一瞬だった。 正面からトラックが突っ込んできて、 オレは…」 私の手を握ってるショウが 小刻みに震えてる。 『一瞬だった』 ショウとは別の、 でも、同じ悲しみ、憎しみ、痛みを感じた瞬間が 私の中でも鮮明によみがえってくる。