泣き恋


高校3年生になる春。


「クラブ行かない?」


突然、金曜の夜に真希が言った。


「え? …でも、いいや」

「家ん中にずっといたらダメだよ。

たまには気分転換しないと」


私の声はムシして、

真希が洋服を選び出す。


「紗奈は、この黒いワンピとか似合いそうじゃない?
オトナっぽいし」


コテを温めだして
メイクに取りかかる。

肩まである髪を器用に巻いて

真希は


“夜の顔”


になった。


学校でも目立つ方の真希は、

私服になると本当にオトナびて見える。