「…バカじゃないの?」
「恋にベタぼれだからね。恋の前ではバカで結構」
「なにそれ」
俺の腰に手を回しながら、歩く恋。
そんな彼女の横顔が、急に恋しくなった。
「…ずっと俺の隣にいてよ。恋…」
「…どうしたの?いるよ?」
「ウソ。モデルの仕事で、いないときもあるくせに」
自分はわがままだと分かってる。
けど、1人でいることが耐えられない。
「…晃が嫌がるなら、モデルなんてやめるわ」
キッパリと言い張る彼女を、おれは抱きしめた。
「…俺には、恋しかいないんだよ…」
「…いなくならないわ。あなたのお父さんみたいには…
私はあなたのために生きてるの。あなただけのものよ
フフッ…ついでにいうと、私だけじゃなくて、琉雨ちゃんもいるけどね」
「恋…」
その言葉に俺は落ち着き、ふたたび歩き出す。
健康で、可愛くて…俺の恋。
彼女はいなくならない。
父親みたいにー…
「恋、好きだよ」
「知ってるわ」
メイクが施された連の顔にソッと触れる。
「…?」
愛しい、彼女ー…
…だから、あの二人の関係を知ったとき、本気で仲を壊してやる。と思ったんだ。