---
「おはよー」
俺は教室に入ってすぐさまカメラを向けた。
ー…カシャ
「やっやだ!早瀬君さいて~!」
「はやせ~~!」
これが日課。毎日撮ってみんなに怒られる。
でも、これでクラスのテンションをあげてる。
「おはよーいいながら撮んなよ~!みんなうんざりしてるって!」
後ろから抱き着いてきたのは、増田 左京 マスダ サキョウ。
バリバリの関西弁が6年たっても抜けないニブイ奴。
「いいだろ、別に。お前を撮ってるわけでもないのに」
「俺は撮ってくれてないん?!ひどいわ、和泉!」
「撮ればいいんだろ?」
ーカシャ。
「和泉。帰ろ」
「おう」
STが終わって俺たちは学校を出た。
今日は一日から一週間、好きなときに家に帰ってもいい期間。
ほとんどの生徒が家に帰る。
だから涙花の両親と俺の両親で食事に行くらしい。
もちろん俺らもいくけど。
「今日ね~」
帰り道につくたびペチャクチャとしゃべりだす涙花。
この話は長ったらしくて、どこで返事をすればいいのか分からないけど、訊いてやるのが俺の習慣。
ー…だけど、今日は少し違っていた。
新しいお店が出来ていたんだ。
いまどき風のカフェって感じの店がー…
「ねえ、新しいお店じゃない?」
店っつーより移動店だろ?
そう俺が言うのを無視して彼女は走り出す。



