「ウソ…キレイ」

「恋よりキレイじゃないよ」

「…日本語、変よ」

「照れるなよ。まあ可愛いからいいけど」

 渡り廊下で、例の彼女とすれ違ったとき、本当に綺麗だと思った。

「こんにちは」

「あ、ああ」

うわ~…。確かに恋も怖いくらい綺麗だけど…それに並ぶ子っているんだな。


目も大きくて、髪もサラサラ…。
今まで見ていた子の中で、一番綺麗なのかもしれない。
 それで15位だろ?十分じゃん。

声も透き通るような声だな…聞いててホッとする。


腕を組んでいた恋が、力を入れているのが分かった。


「…」

「どうした?恋」

「…そんなにあの子のこと、見ないでよ」

声のトーンを下げる恋。

栗色のパーマの髪が、風で揺れる。

「見てないよ」

「ウソ!だって、ずっとあっち見てた」

不安そうに瞳を潤めながら見上げる恋。

「桜を見てたの」

「…絶対ウソよ!絶対ウソ!もう!」
「なんでそう思うの?」

「女たらしなんだもん、晃」

その言葉に俺は笑った。
 そして、恋の肩に腕を乗せる。

「そんなことないよ?」


なるべく、恋の機嫌をとり戻ろうと、笑いかける。

「…そんなこと無いことない」
「恋だけだよ」

恋の髪にキスする。

「…」
「そんな妬かないで?俺は恋だけのものだよ」



そう言って、顔を上げた恋の桃色の唇にキスをした。