扉を開けた瞬間、桜の花びらが、校舎の中へと入った。


「…キレイだな」

「…ああ」

「ほんまな」


何本も植えられている桜の木は、全部満開になっていて…


なんだか、別世界に来たようだった。


「…おい…あれ、15位の子じゃないか?めっちゃくちゃキレイだって噂のー…」


琉雨は小さく指をさしながら、向こうをさす。

俺はその言葉に笑いながら、静かにそっちを向く。


ー…え?


「確か、名前がすごい珍しいんだよ。発音とか、読み方とか可愛いんだけど、漢字はちょっと悲しいんだ。
んーと…あ」


うそ…だろ?

なあ、夢だよな

そんなー…




「羽生涙花、だ」


「涙…花…?」


そよそよと吹く風に髪を揺らす、彼女。


見たことある面影。


愛しい横顔。

まるでこの場所だけ、時間が止まったようだった。