朝から大きな声。



近所迷惑なんか考えないで、毎朝玄関から涙花は俺を呼ぶ。

「今行くって…」


ため息をつきながらも、朝一番に涙花に合えるのが嬉しくて、ひそかに笑っていた。

「…ってきまーす」
「ハイ、いってらっしゃい」

大きな扉を開けると、そこには電柱にもたれた後姿の涙花がいた。

「涙~花…」
「…おはよ、和泉」

振り向いた涙花をみたとき、驚いた。

…たしか、涙花の髪はサラサラのセミロングだったはず。

すごくキレイで俺は、その髪が手に触れるたびドキドキした。


「涙花さん…それ…」


「コテ、買ってもらったの」

涙花の髪はフワフワの綿菓子のように巻かれていた。

「友達が巻いてて、やりたくなっちゃった」

ニコッと笑う涙花。いつもより、ドキドキした。
「…へぇ~。いいんじゃない?」

涙花は満足したようにいつものように胸を張った。
オシャレなんか、本当に興味ないのに、髪だけはしっかり手入れするんだな…

「よし。撮ってやる」
「本当?!」

嬉しそうにスクールバックをおきながら、せっせと髪の手入れをする涙花を一枚撮っておいた。
「ちょっと!」

…めんどくさがりの涙花が髪を巻くなんて年に1・2回だからな。


「撮るよ。笑って」



ー…カシャッ