「っ最低だよ。お前…涙がかわいそうだ…っ」

涙を流す工藤都を、工藤雅が慰める。
…知ってるよ。
わざと最低な人間を演じてるんだから…

「早瀬君、来て!」

見るに耐えかねた宇野が俺の手を取り、思いっきり走った。

ー…時間はすでに薬を飲む時間を過ぎている。

それからはしって五分。
 ついたのは屋上だった。

立ち止まった瞬間





それは来た。


 目の前はノイズにおかされ、宇野の姿が見えなくなる。

そしてすぐに立っていられなくなり、ガタッと屋上の扉のほうへなだれ込む。
 そのとき、時計を見て、初めて自分が薬を飲み忘れていることに気づいた。

「…ケホッ」

クラクラする頭を抱え、必死に倒れないように足を踏ん張る。
きっと宇野から見たら、まるで酔っているようだろう。
 でも幸い、宇野は振り浮いていなかった。
俺はだんだん息が荒くなる。

「ハッ…ハッ…ゲホッ…」
「…早瀬君はこれくらいでばてたりしないでしょ?」

そういって振り向いた宇野は驚きの目を俺に向けた。

…そうだよ。普通はバテねえよ。

¨普通¨なら…な。

 貧血もだんだん悪化していく。
もう立っていられないと分かると、俺は静かに腰を下ろす。

「ゲホッゲホゲホッ…うっ…」

カタカタと震える手で、ポケットからピルケースを取り出す。

「宇…野…」
「え?」

「水…水持って来い!早く!」

「うっうん!」