ーガチャガチャ

ふたをとれば、まだいけるかもしれないー…
小さな希望と、和泉が手伝ってくれるのを願って、私は必死にふたを取り外そうとした。
 もし、それでもとれなかったら…なんて、考えたくもない。

「…フーン。そんなに大事なんだ?…まあ、がんばれ」

…私のこと、嫌いになってもいいから


指輪だけは持っていてほしい。
和泉に渡すんだ。
また、拾って…もう一度約束をする。

 泥のたまった排水溝に手を突っ込んで、それらしきものを探すが、全く見つからない。

コツコツと和泉が去る音が、ただ玄関ホールに響く。

和泉…手伝ってよ。


振り向いてよ。


¨ゴメンゴメン、さっきのは冗談だよ。投げたのは石だよ¨

そういって笑ってごまかして欲しい。

たとえ、ごまかしが聞かないことだとしてもー…


「いず…み…」


ちいさな私の声は和泉に届くはずも無かった。

和泉は戻らず、振り向かず






前へ進んでいった。



階段を上って姿が見えなくなるまで


私は小さな希望を探し続けた。







いったん、私は探すのを中断して、授業に戻る。







そのとき、和泉は病院へ行くために早退していていなかった。









 排水溝のふたの隙間にはさまれたそれはキラキラと光を放つ。



ー…それを見つけたのは、寮に戻らないといけない時間になってからだった。