「和泉!」

バタバタと涙花は俺に向かって走ってくる。

俺はハッとして涙花を冷たい目で見た。
…もし、このままあの約束を守って、ずっと一緒にいたらー…

考えるまでもない。

俺は確実に死に向かっている。

涙花はその恐怖で壊れないだろうか

そんな保証は、世界中探してもないんだ。

…涙花の泣き顔は見たくない、

俺のせいで涙花に泣いてほしくない。

「和泉、どうしたの?急に走っていくから…さっき南グランド…」

「うざい」


ー涙花を泣かせないためなら、俺は悪魔になってやる。


「和泉…」

毎日うざいと言い続けたけど、今日は悪意を込めて言った。


辛くても、悲しくても




いつか言わなくてはならないこと。

「いつも言ってるけど、うざいよ、羽生。
いつまでもいつまでも和泉、和泉って追いかけて来やがって…
今日だってなんで追いかけてくんだよ。
はっきりいうけど、お前ストーカー並だよ」

それから思いつくかぎり、涙花の悪口を本人の前でひたすら言い続ける。

ときどき、苦笑して、涙花を傷つける。

「…最後に言っとくよ。
…自分は特別とか思うなよ」


これでいい。

これでいいんだ。

受験までの間。
絶対に涙花に気づかれないように。

¨受験する¨なんて、バレないように。

涙花を傷つけないために。

涙花のために





俺は悪魔になる