そんな風にして私は下平さんに見い出され、今ここにいるのですが…。

「やっぱりいいですよ、下平さん…私、学校なんて…」

「まぁた…」

サングラスを指先でキュッと押し上げ、下平さんは溜息をつきました。

「いいかい?CDこそ販売していないものの、今や君はマジカルネットでのダウンロード件数450万、ヒットチャート軒並み1位獲得の歌姫なんだ。メディアへの露出は、今はほんの数枚の画像のみに過ぎないけれど、君の顔を知らない者なんてこの世の中に幾らもいないだろう。今にテレビ出演も引っ切り無しにオファーが来るようになる」

そう。

たった一年で私は知らぬ者のいないほどの存在となりました。

私は崖の上で歌っていた頃と同様に、ただ歌を奏でていただけ。

そりゃあ歌う曲は少し明るいものになって、下平さんのお陰で素敵な衣装も着させてもらえるようになったりはしましたが…それでも、やっている事は一年前と全く変わりません。

急激な周囲の変化に、私自身戸惑いを隠せないのです。

なのに、この上テレビ出演だなんて…。

私は嫌われ者で、黒い翼を持つ悪魔なのに…。