「あ、あの歌は…」

言霊の調べは、人前では歌ってはならないと言われています。

「まだレッスン中の曲なんです。本当は人前で歌っちゃいけなくて…芸能プロダクションの人にも、もう歌っちゃ駄目だぞって叱られたんです。だから…」

私はその場しのぎの嘘を並べて、クラスメイト達を何とか納得させます。

「何だぁ、そうなのかぁ」

「いつリリースされるんだろう?楽しみー」

「配信開始されたら、あの曲もダウンロードするからね、りりむん」

皆は私の話を信じてくれたようです。

よくしてくれる皆を騙すのは少し心苦しいですが…仕方ありません。

あの歌が本当に魔法だとしたら、迂闊に口ずさめば皆に悪い影響を与えてしまうかもしれません。

もう、少なくとも学園内では歌わない方がいいでしょう。