校門を潜ると。

「！」

聞き覚えのあるクラクションの音。

振り向くと、高級車の窓から下平さんが顔を覗かせていました。

「そろそろ下校時間だと思ってね。迎えに来たんだ」

「下平さん」

やっと知った顔に遭遇すると、どこかホッとします。

パタパタとローファーの音を立てて、私は車の後部座席に乗り込みました。

それを確認して、下平さんはゆっくりと車を発車させます。

「これからこのままレコーディングスタジオに向かうけど…どうだい？初めての学園生活は疲れたかい？」

「いえ！私は元気いっぱいですよ？」

下平さんの問いかけに、私は弾むような声で答えます。

また明日も、あんな楽しい友人達と過ごせる。

あの興味深い授業が受けられる。

騒々しくも笑顔の絶えない学園生活を送れる。

それだけでフワフワと足が地に着いていないような気分になりました。