静まり返った周囲。

…下平さんはニッコリと笑います。

「ミーシャ、君達エルフの一族は、それと同様の悲しい偏見で過去に愚かな民族紛争を起こしたのではないのかい?肌の白いエルフだろうと、肌の黒いダークエルフだろうと、皆同胞…そう言って何百年も続いた紛争をおさめた先人の言葉を、君は忘れたのかい?」

私も世界史の授業で習いました。

過去にこの天空宮で起きた、エルフの民族紛争。

多大な犠牲者を出した事の発端は、ただ肌の色の違うエルフがいた。

それだけの事でした。

「それに」

下平さんは右の人差し指をチョイと動かします。

その動きで。

「あ!」

ミーシャさんの制服のブレザー。

その胸ポケットに入っていた携帯電話が浮遊して、下平さんの手元に届きます。

小物を動かす魔法。

魔法の初歩の初歩でした。