「こらっ」

下平さんの少し強めの口調。

私はビクッとなって顔を上げます。

「俯かない、下向かない。デビューする時に約束しただろう?」

「は、はい…」

内向的ですぐネガティブな事を考えてしまう私への、下平さんとの約束事。

『俯かない、下向かない』

私が顔を上げたのを確認して、彼は運転しながら話を続けます。

「たとえばトーク番組への出演依頼が来たとしよう。色々司会の人が質問してきたとして…君は上手く受け答えできなかったらどうする?テレビを見ている視聴者はこう思うんだ…『あー…歌は上手くても、我らが歌姫は教養のない、的外れな受け答えしか出来ない子なんだな』って…」

「っ…!」

そんな…想像するだけで涙目になってしまいます。

「脅すつもりはないけどね」

クスッと笑う下平さん。

「歌姫だって、一般教養くらいは身につけておかないと。それに同年代の子達との共同生活というのも、それはそれで色々と得られる物があるもんさ」