「愛姫?」 背中に響く声に、胸が苦しくなった。 ギューって回した腕をさらにきつく締める。 「おい、愛姫」 呼ばれた名前に、胸が痛くなった。 「愛姫って」 あたしの手に触れた碧君の手がそっと締めた腕を離した。 それが哀しくなった。 振り返った碧君が、あたしの目線に高さを合わせて頬に伝う涙をそっと拭う。 「……碧君」 やっと出た言葉。 それと同時に唇に触れたぬくもり。 碧君の指があたしの唇に当たり、あたしは碧君と目を合わせた。