無口なDarling



ガン!!


大きな金属音がしたと思ったら、屋上の少し錆びたドアが大きく開かれていた。


そこには息切れをした、大好きな姿があった。


「え・・・猛?」


驚いた私に構わずに、ズカズカと近づいてくる。


どうして?


どうして猛がここに?


ポロポロと涙が溢れ来て止まらない。


「わっ」


何の躊躇も無く、猛の腕に包まれた。


付き合っていた時と変わらない温かさ。


猛の強い腕の力。


どうして抱きしめられているか分らないけど、一つだけ分る事がある。



“猛が好き”


この腕のぬくもりを忘れる事なんて私には出来ないんだ。



だって、こんなにも体も心も猛を求めてる。



「澄子」


涙で濡れている頬を両手で包み、何度も瞼にキスをしてくれる。



「猛・・・猛」



「ごめんな。一人で泣かせてごめんな」



ギュッと抱き合うと、少し痩せたんだと感じる。


隣にいて支えてあげたい。


勉強で疲れた猛の傍にいたい。


八つ当たりしたっていい。


ワガママも言わない。


だから・・・


「澄子、頼む・・・」



ゆっくりと視線がかみ合ると、猛がそう呟いた。


「え?」



「頼むから・・・隣で待ってて欲しい」