無口なDarling


授業が終わり、いつもより早く帰り支度をする。


猛に会いたい



無性に会いたい



そんな想いしか心には無く、親友に別れを告げると一目散にドアに向かう。



ガタン!


持っていたカバンの持ち手が机の角に引っかかりイラつきを覚える。



「もぉ~」


そのせいで散らかってしまったカバンの中身。



せっせと拾っている手元がフイに暗くなった。



誰かが手伝ってくれるのかとぱっと顔をあげると、そこには大八木君が立っていた。



「大八木君」


なんだ、手伝ってくれるなんて優しいな。


勝手に疑ったりして悪かったな、っと思っている矢先・・・



「・・・なっ」



筆箱を拾う私の手に、手の平を重ねてきた。



独特のベタっとした感触に思わず手を引っ込める。




「澄子ちゃん・・・」



さっきまでは“佐々木”と苗字で呼んでいたはずだよね?



「あの、私のノート返してくれるかな?」


大八木君は、私のノートを手に取ったまま離さない。


猛の所に行きたいのに・・・


そう思いつつも、ノートを彼の手にあるまま行く事も出来ない。