「おい」
痛い位掴まれて、ギュっと目をつぶっているとフイに腕が痛くなくなった。
ぱっと目を開けるとそこにいたのは猛だった。
「猛っ」
猛の姿を確認すると、体が安心感に包まれた。
「おい。お前人の女の腕勝手に掴んでんじゃねーよ。腕へし折るぞ」
お得意の鋭い睨みと、口から出る暴言に大八木君は石像の様に固まってしまった。
キャンっと鳴くように尻尾を巻いて逃げてしまった。
「う~猛ー」
甘えるように猛の首に腕を回す。
「誰?アイツ」
私の背中に手を伸ばして、ゆっくりさすってくれる。
「知らないー。急にアドレスとか渡して来たの」
「ったく。そうゆう事は早く言えっつーの」
呆れるように息を吐き、私のおでこにキスをしてくれた。
「何かあってからじゃ遅せーんだからな」
この前先輩達に蹴られた時の事を思い出してか、猛は優しく心配してくれる。
「うん。ありがと猛」
いつのまにか授業が始まっていたようで、廊下はシーンとしていた。
「このままサボりてーけど、授業出ねーとな」
猛にしては真面目な発言に少し驚いたけど、そんな猛が嬉しくて笑顔で頷いた。

