それから一週間。猛は口をきいてくれなかった。
麻生君は何回も
「どうしたの?」
って聞いてきてくれたけど、なんて言っていいか分からなくて。
でもバイトを休むわけにもいかなくて。
仲直りしたいのに、猛は私を避けるし、電話も出てくれない。
どうしよう。振られちゃうのかな・・・誤解なのに・・・
今日はバイトもないし、ちゃんと仲直りしなきゃ。
すっごい怖いけど、猛に話しかけよう。
そう思って、昼休み猛のところへ行く。
「お弁当作ってきたから一緒に食べよ」
一言。その一言だけ頑張ろう!
きっと猛は怒りながらも
「ああ」
って一緒に食べてくれる。
口では美味しいなんていってくれないけど、いつも全部食べてくれるもん。
失敗したから揚げも
カバンの中で傾いてちょっと形を崩した玉子焼きも
きっと今日だって、食べてくれるんだ。
猛のクラスに行くと、ドア付近に猛が立っている。
ドキン・・・
また無視されちゃうかなぁ・・・・怖いな・・・
二つのお弁当がやけに重い。
よし!いけ!澄子!!
「たけ・・・」
声をかけようとすると、猛のクラスの女の子が丁度猛に話しかけてしまった。
「猛ぅ。一緒に学食いこうよ~?最近あのまっずそ~な愛妻弁当も無いんでしょ~?私いつも猛のお腹心配だったんだよ~?」
キャハハと高い声が頭に響く。
ドン!って鈍器で頭を殴られたみたいに。
・・・・持って入るお弁当がもっと重い。
持っていることができないくらい重いよ。
「おい!お前最低だな。お前なんて料理さえできないだろ!」
「賢、ひっどぉい!私だって料理くらいできるしぃ!」
「超食べたくねぇ。」
麻生君・・・・
目頭が熱い。
猛・・・あなたは否定してくれないの?
やっぱり無理して食べてたの?
いつもいつも無理して全部食べたの?
いつもいつもいらなかったの?

