今話題と言うことで、席は満員に近かった。
澄子は不安げに「満員かなぁ」と言っている。
そんな澄子の手を引きカウンターに行き、チケットを買おうとすると満員であると店員が言う。
「やっぱりかぁ・・・」
それを聞いた澄子はシュンと顔を俯いた。
「あ。お客様、料金が少し高くなりますが、カップルシートでしたら一つ空席がございますよ」
店員がシートの図を指差しながらそう言った。俺は迷わず、
「じゃあそこでいいです」
っと言い放った。
俯いてた澄子は、俺と店員の会話を聞いて再び顔を輝かせ、
「猛っいいの!?」
目を見開きながら俺の腕を引っ張る。
「見たいんだろ?」
スっと髪を撫でてやると、嬉しそうに俺の腰に抱きついてきた。
「ありがとう猛・・・」
俺はチケット代を払い、売店に行き食い物と飲み物を買った。
「猛、私この位払うよ」
カップルシートが以外にも高いことを知った澄子は悪そうな顔をして、売店のお金を払おうとする。
・・・別に高くもねぇし。
「いいって。今日はお前の誕生日なんだから」
そう言って、澄子に飲み物と食い物を渡すと嬉しそうに微笑んだ。
・・・こんな風にさっきから澄子の嬉しそうな顔を見てると、なんだか今までしてきたデートをちょっと後悔した。
今まで澄子は、もしかしたらあまり楽しくなかったのかもしれない。

