「早く打ちたい・・・?

ちょっと、木刀貸して」


「え・・・?」


矢野先輩は、
あたしの手から木刀をとると、


木刀を握りしめて、


「・・・」


ダダンッ・・!


力強く木刀を
振り下ろしながら、


足をリズムよく
早くだした。


「・・・・っ!!」



か・・かっこいい。



そうだ、
あたしはこんな矢野先輩に

惚れたんだ・・・。



昨日のは、
間違い。


そう・・間違い。


「・・分かった?」


「えっと・・ごめんなさい。

もう一回やってくれませんか?」


あたしが、
そう言うと矢野先輩は・・・。


「ちっ・・・ほら!」


ふわっ・・

矢野先輩の手が
あたしの手に触れ、


そして
矢野先輩の息が、
あたしの耳にかかる。


矢野先輩の手は
細くて、ゴツゴツした
男の人の手だった。


力強く、そして
優しくあたしの手を
にぎる矢野先輩。


「え・・・っ!?
矢野先輩・・何やって・・」


「いいから!

ほら、こうやって・・・


早く手を打つ!!」


びゅんっ・・


あたしの手を動かす矢野先輩。


「こんなことしたら、
彼女さんに怒られますよ・・・?

矢野先輩・・」


弱々しく、
そう言うあたし。


馬鹿だな、あたし。


こんなこと聞いて・・


ものすごく
傷つくだけなのに。



けれど。

矢野先輩の答えは

あたしの予想を
見事に覆した。



「いない」



そう言う矢野先輩。



「え・・・?」



「彼女・・・いない」



「・・・!!」



矢野先輩の言葉が、
あたしの心を
掻き乱した。


「・・・っ?・・・!!」


「どーしたんですか?

長瀬先輩・・?」


「アイツ・・・っ」