「真依ちゃん…?」



あたしの後ろから声がして、とっさに桐沢社長から離れた。



そして声のするほうを見た瞬間、血の気が引いていくのがわかった。



だって……



「……夏、羽さん」



……桐沢社長の奥さん、夏羽さんが立っていたから。



部屋が静まり返る。



なにも言えないし、手や肩が震える。



「……なぁ、夏「誠?」



桐沢社長が何か言おうとしたけど、夏羽さんがそれを止めた。



……絶対怒られる。



……泣いちゃうかもしれない。



今までダメだと思った時に止めていれば……こんなことにはならなかった。