涙が愛しさに変わるまで



奥さんがいるんだよ?



可愛い、優しそうな奥さんがいたんだよ?



「なんで……来たんですか」



桐沢社長に抱きしめられて落ち着いてきたあたしは、ゆっくりだけど喋れるようになった。



「おまえが心配だからに決まってんだろーが」



……やめてよ。



そんなこと言われたら……もう死んじゃいそうなくらい嬉しいよ。



「もう……大丈夫ですから。はなしてください」



あたしが桐沢社長の腕から抜けようとすると、もっと力を強められた。



「なっ……!はなしてくださいっ」



「嫌だ」



駄々っ子のようにあたしを抱きしめる桐沢社長。