奥さんがいるんだよ?
可愛い、優しそうな奥さんがいたんだよ?
「なんで……来たんですか」
桐沢社長に抱きしめられて落ち着いてきたあたしは、ゆっくりだけど喋れるようになった。
「おまえが心配だからに決まってんだろーが」
……やめてよ。
そんなこと言われたら……もう死んじゃいそうなくらい嬉しいよ。
「もう……大丈夫ですから。はなしてください」
あたしが桐沢社長の腕から抜けようとすると、もっと力を強められた。
「なっ……!はなしてくださいっ」
「嫌だ」
駄々っ子のようにあたしを抱きしめる桐沢社長。
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