−コンッ、コンッ。 部屋の扉が叩かれる。 「……まー子?」 優しい声であたしを呼ぶ。 泣いてるから返事したくないよ……。 「まー子……大丈夫か?」 ねぇ……奥さんは? かわいらしいあの奥さんは……? なんで……なんであたしなんかのところに来るの? 「やっぱり泣いてんじゃねぇか……」 あたしは後ろから抱きしめられた。 「桐……っ沢しゃちょ…」 「本当泣き虫だよな」 桐沢社長に言われた泣き虫が悔しくてまたあたしは強がった。 「泣いて……ないっです……から!」