桐沢社長の冷たい態度より、あたしが今涙が出そうなのは……
……あたしが笑顔を作った後……桐沢社長がぎゅっと手を握ってくれたから。
奥さんがいるのに……
あなたの考えてること……まったくわからないよ……。
あたしはコーヒーを作りに、隣の部屋へ。
コーヒーを混ぜていると、ぽちゃんと雫が落ちた。
あたしはより回すスピードをあげた。
それでも雫が落ち止むことはなくて……
それが涙だと気付いたのはコーヒーから湯気が出なくなるよりも、後だった。
「っ……ばぁ、か」
あたしは床に座りこんで泣いた。
「ばかぁ……ば、っかだよぉ」
誰よりも二番目でいいと願ったのに……。
奥さんが現れたら……あたしも、「誠の妻です!」そう言いたかったと思った。



