小言は、社会科準備室のドアを開けるまで続いた。


ドアに触れる頃には、我慢しすぎたせいか、心身に支障をきたし、手足は震えていた。


目をギュッと瞑り、覚悟を決めて準備室に入る。


準備室には二人の先生が待機していて、中田先生とは裏腹に明るく迎えてくれたから、私は救われた気分になった。


「いいね〜っ、こんな可愛い先生に教われたら、社会の成績上がっちゃうよ!!」


若そうな男の先生が私の手を取り、両手で握手をしてブンブンと上下に振り回す。


その様子を中田先生が見ていて、ジロリと鋭い視線を浴びせる。


「この子にあまり構わないでくれるかしら?あくまでも勉強をしに来たのであって、男に色目を使いに来たのではないのですから」


「す、すみません…つい…」


若そうな男の先生も中田先生に指摘され、握っていた手を慌てて離す。


簡単に自己紹介を済ませて、一時間目の授業に向かう。