ホームルームが終わり、先生と一緒に廊下を出た。


「谷川さん、高校生に色目を使う為に来たのかしら?」


社会科準備室まで歩く途中に言われた、キツイ一言。


「ただでさえ、男子校生は敏感な時期なんです。これから教師になろうとしている者が、今からそんな態度では困りますよ。高校生と関係を持つなんて、あってはならない事ですからね」


「いえ、決して、そんな事は…」


「言葉ではそう言っていても、態度がそう見えるのよ。やましい考えがあるなら、先生になるなどやめなさい」


中田先生のヒールの音がカツカツと廊下に響く中、私は有りもしない事で罵声を浴びせられた。


涙が溢れて零れ落ちそうになるのを、拳をグッと握り絞めて堪える。


今、泣いたら負けだ。


私は教師になるべく、ここに来たの。


だから、こんな事、何でもない。


先生を勘違いさせてしまった私が悪い。


我慢出来るはずだ。