教育学部の棟を過ぎても、
こころはまだ歩みを止めない。


いかついレンガの学び舎が、
今や水を吸ったカレーパンの集積に思えた。

こころは僕を、どこへ連れて行くつもりか。

不安になりながらも僕は、口実として話掛けた。


「なぁ、話ならどこでもいいと思うんだけど。
もう人も居ないんだし。」


「それは私も分かってるけど、気分として落ち着かないから――」


ちらりと僕を一目見ると、
ノルマは果たしたとばかりにすぐまた前を向く。

一体何を警戒しているのか、

恐れているのは僕の方だと言うのに。