「――ナツメ君、」 真面目な面持ちのこころがそこに居た。 守衛室の陰から僕を見て、 "こっち"と口を動かし手招きすると、 後ろも見ずに歩いて行った。 今更ながら、 勝手にイメージしていたこころと食い違う行動に、 僕は何の文句も言い出せず、 黙って後に付いて行った。 守衛の老人は、 僕の会釈に目を逸らし、 できそこないを見た気分の悪さを誤魔化したいのか、 首を振った。