僕は立ち止まる。

ちょうどそこは道の端、なにがしかの軒下。

じっとうつむくしかなかった。
むしょうに悲しかったし、
悲しみにひたっていたかった。


ポケットの中の携帯が震えている。

その振動が、こんな所で溺れる前にと、

乾いた視線を持ち上げさせた。


誰かの鼓動のように電話は鳴り続ける。

僕の携帯が鳴る事はまれだ。

アテはあっても楽しみは無く、
僕は義務的に携帯を取り出し、開く。


息を吹き返したとでも言いたげに、携帯の画面が暗陰で光った。