「…うん…

そうだなぁ。

実はその正体は
誰にも分かんないかもしれないね―…

でも茜、一つ言えるのは、

自分の人生の流れの一つ一つは、
実は偶然じゃないかもしれないっていうことかなぁ…」



少女は首をかしげながら、

幼いながらに考え込んでいる。




「うー…

よく分かんないや…

難しいんだね」




そして少女は、
思い出したように言った。




「あ、ねぇ!!

ママの昔の思い出ってなぁに?」




「えーっ!!

聞きたいの?茜」




「うん!!

ママのお話いっつも面白いし、
聞きたい!!」




母親は

少女のこの好奇心の旺盛さは
自分に似たかもしれないと

改めて確認しながら、

少女を愛しく見つめ、

ふぅーっと一息吐いた。




そうして母親は頭の中で、

学生時代の記憶の引き出しを

そっと開き始めた。




「しょうがないなぁ…。

でも長くなっちゃうよ?」




少女はベンチに腰掛け、言った。