「…うん、これでいいわ」

白いドレスに身を包み、鏡の前で満足そうな顔をして彼女は笑った。


「ありがとうございます」


「いえいえ。お礼を言うのは私のほうよ。ありがとうね、京子さん」

「いいえ。お客様にご満足いただく事が、私共の仕事です」

「固いわねぇ」

肩をすくめ、彼女は京子に向けて苦笑した。
それを見ずに、京子は鏡に写った彼女の姿を瞳に映した。

「…綺麗ですよ、鹿島さま」

「ありがとう」

鹿島、と呼ばれた花嫁はにっこりと笑った。



『花嫁さんて綺麗だよね、京ちゃん』



不意に、思い出した一言に、京子は苦笑を溢した。
ここ最近、思い出すこともなかったあの子のこと。