「で、アレか。」
「えぇ、アレですね。」

二人が視界に捉えたのは縛り付けた幼い女の子を金属バットで殴りつけようとしている、今回のターゲットの姿だ。

「最低ですね。自分より力の弱い者を痛め付けて楽しいのでしょうか。」
「つくづく馬鹿だよね、人間って。」
「はい、馬鹿ですね。」
「じゃ、目標なのは間違い無いし殺してくるわ。」
「分かりました。どうぞごゆっくり。」



「へへ、怖いか、怖いだろう?これからお前は死ぬんだ、殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ、体中から血を流しながら死ぬんだよ!」

男は金属バットを振り回しながら、怯える少女に近付いていく。
目の前の餌にあまりに夢中だったのか。男は気付く事が出来なかった。



―――己の影に混じった、異形のもう一つの影に。



「やぁ、コンバンワ。」
「―――!?」
「あ、見てる場所は正しいけど下です下。貴方の影。」
「あぁ?……ヒィッ!?」

思わず武器を落としてしまう。
赤く染まった自分の影が口元を歪めながら話をしてきた、その光景があまりにも衝撃的だったのだ。



「えー、貴方は獄落ちが確定しました。己の性的欲求の為に穢れなき命を奪った罪は重い…そうです。あ、喋れないと思いますけど構いません。今喋られると鬱陶しいんで口塞いでますから。…で、えーっと…そうそう、貴方の処刑方法ですが。」





赤い影が広がる。
それは質量を持って包み込み、そして―――





「血の海の中で生きたまま心臓以外の臓器を抜き取られ、最後は血液が拒絶反応を起こして激痛に苦しみながら溺死…って事で良いですか?」





男を飲み込んだ。