私は何時も通り、迷いもせずに特等席へ向かいました。



そして、またうたた寝をしようなんて考えていたのに、特等席には人が座っていた。



私は驚きました。



勿論、人がいることに驚いたのではありません。



田舎だからって人がまったく居ないわけではありませんから。


私が驚いた理由はね、その人の風体です。



洒落た帽子を被るクセに、着物を着ている。



そして、その着物がなんとも派手でね。一見、女性の着物のような鮮やかなんですよ。



蝶やら、花やら。繊細な模様は本当に美しい。着ている人間に不釣り合いな程、当時の私には輝いて見えた。