「あのぉ……」 無言で前を進む、大きな背中に声をかけた。 いったいなんであたしが呼ばれたのか、意味がわからない。 「浅葱。」 「なんですか」 「俺、我慢できないんだけど」 「何をですか」 その数秒後、聞いたことを、心から後悔した。 「浅葱が欲しい」 他の女子にしたら、嬉しい言葉なのかもしれない。 でも、あたしには、まるで興味がないんだ。 …こういう色恋沙汰には。