慌てたのはメイリアの方だった。

「わっ、泣かないで、わかったから、ねえ」

 なだめる少女の言葉に子どもは頷いた。

「うん。僕大きくなったら、レジアスのお嫁さんになるんだ」
「えっ?」

 一瞬、固まるメイリア。
 そして、思い切り首を横に振る。

「無理、それ無理だから」
「なぜ?」
「なぜって、サリィちゃんは可愛いけど、男の子でしょ。男同士は結婚できないよ」
「そうなんだ」

 酷くがっかりした顔をした次の瞬間、子どもはにっこりと笑う。

「だったら、メイリア、レジアスのお嫁さんになる?」
「何で、私がっ!」
「だって、メイリア。レジアス好きでしょ」

 サレンスの言葉にメイリアは大きな瞳をさらに丸くする。
 やわらかな頬に朱が散る。

「それは、別に嫌いじゃないけど……」

 言いあぐねるように視線が横に泳ぐ。

「そうしたら、メイリアともずっと一緒に居られるし。えーと、いついかなるときもだったっけ?」

 結婚式の誓いの言葉を引き合いに出しても、幼い子どもには複雑な乙女心はわかっているわけではない。急に押し黙ってしまった少女に呼びかける。 

「メイリア?」

 それを恨みがましげに見ながら、メイリアは力なく答える。 

「いっそ、サリィちゃんがお嫁にもらってくれる?」
「あっ、そうか、そうだね」

 無邪気そのものににっこり笑う女の子みたいな男の子に、メイリアは複雑げに小さなため息をもらす。

(可愛すぎるよ、サリィちゃんは)