「サ、サレンス様っ!」
「なに?」

 可愛らしげに小首をかしげる少年の様子にレジアスはため息をつきながらも、心を決める。本心を言わない限り、この少年は納得しないだろう。

 何しろサレンスが生まれてきて以来の長い付き合いである。さらに両親に疎まれた子どもを育て上げたのは、レジアスだと言ってもいい。互いの気性はわかりすぎるくらいわかっている。

 可愛らしげな見かけに反して、意外に頑固なところもある少年である。

 その上、この少年は<神の器>であるせいなのか、それとも遊び相手がませた女の子ばかりのせいなのか、年齢よりも妙に人心に敏い。言い抜けをとても許してくれそうにはなかった。

 ひとつため息をついて答える。

「嬉しくないわけないです。ただメイリアは身体が丈夫というわけではないですからね」

 果たして、サレンスはそれだけでレジアスの言いたいことを正確に察した。

「心配なんだ?」
「そうですね」

 レジアスの答えに少年はやっと納得したように頷いた。

「そっか。でも、とりあえず、おめでとう」
 
 にっこりと笑う少年に、レジアスは苦虫を噛み潰したように渋い表情を見せる。

「とりあえず、は余計ですが、ありがとうございます」

 礼を言いつつ、レジアスは本来の用件を思い出す。なるべく早く伝えたくて、この少年を探していたのだ。