「だって、ねえ」
「酷いなあ、メイリアまで」

 口を尖らすサレンスは昔のまだ幼く可愛らしかった時分を思わせるが、ここ最近は背も伸びて体つきもずいぶん男の子らしくなってきていた。

 彼の生来の人目を奪う麗貌にも、男の子らしい精悍さが加わり始めていた。
 もう十三歳になる。 
 さすがに女の子に見間違えられることもない。

 そのせいか女の子たちは、いつも一緒に遊んでいた彼を男として意識しはじめているのだろう。

 その上、どんなに可愛らしい顔立ちであったとしても、子どもと大人の境目のこの時期は、妙に間延びした印象を受けたりするものだが、いまだに非の打ち所なく整った面差しは名工の手による精巧な人形のようでもある。

 メイリアの立っての願いで切らずに伸ばされたきらめく銀髪は、さらさらと肩先に流れ、淡い光を帯びているようだった。

 これでは、側に並ぶには女の子の方にかなりの勇気を必要とされるだろう。
 自分のほうが引き立て役になりかねない。

「大人になると言うことは、色々あるのよ」

 意味深に告げるメイリアだが、まだ少年のサレンスには伝わらない。

「意味、わからないよ」
 
 すねたように膨れ面をするサレンスを後目にメイリアは戸口に呼びかける。

「で、何、そんなところで固まってるの?」