「え?」

 レジアスの腕の中で今度はメイリアが青い瞳を瞠る。

(嫌ってるって思われていたんだ)

 沈黙が二人の間に流れる。
 やがて。

「そうだな。私には関係ないのかもしれないが、君に嫌われるのはイヤだし、君が泣くのを見るのはもっとイヤだな」

 ぼそぼそと語られる言葉にメイリアは息を飲む。どうやら泣き顔も見られていたらしい。

「でも、君はいつも私よりサレンス様のほうが気になるようだね。さっきも一番先に気にしていたのは、自分の身体よりサレンス様の方だ」

 自らを嘲るように語るレジアスにメイリアはますます眼を丸くした。
 それはまるで嫉妬しているように聞こえる。

「違うよ」

 メイリアは顔をレジアスの胸に押しつけた。頬が熱い。きっと顔が真っ赤になっているだろう。

「だって、レジアスはサレンス様が一番大事でしょ。だから、私はいつも……」
「いつも?」

 言葉を切ったメイリアに先を促すように声がかかる。
 メイリアはレジアスの服をぎゅっと掴む。

「言えない」
「そっか」

 レジアスは無理に聞き出そうとはせず、メイリアの背を宥めるようにぽんぽんと叩く。
 また子ども扱いされたような気がしたが、今は腹が立たなかった。

「送るよ」
「うん」

 なぜなら、こっそり見上げたレジアスは耳まで真っ赤だったからだ。