「え?」
背後の不穏な気配に、ぎぎぎと音を立てそうなくらいぎごちない仕草でクレヴァスが振り向くと、そこになにやらたくさん食べ物を載せた盆を抱えたレジアスが居た。
「あっ、別に」
彼を睨みおろす蒼い瞳には怒りをはらんだ冷たい光が浮かんでいる。
とっさにごまかし笑いを浮かべたが、それが消える風はない。
まだ15歳にしかならず、当然力も解放されず、華奢な少年でしかないクレヴァスにとっては、18歳とはいえすでにたくましい体つきのレジアスは大人の男に見える。しかも、何やら怒りを買ってしまったようだった。
さすがに対抗はとてもできそうになかった。
「あ、俺いくわ。じゃあな、メイリア」
「ええ」
顔を引きつらせながら去っていくクレヴァス。
しかし、レジアスは彼を無視して、小さな少年の顔を覗き込む。
「だいじょうぶですか、サレンス様。今、殴られてなかったですか?」
すでに纏っていた不穏な気配は消え去っていたが、彼の蒼い瞳はいまだ怒りをはらんでいる。彼の視界からは、サレンスが少年に手荒に小突かれたように見えたのだった。
怪我でもさせられていれば、報復する気満々である
「え? 殴られてなんかないよ。レジアス、心配性だな」
にっこりと笑うサレンスに安心して、今度は彼の視線がメイリアに向く。
メイリアは少年に絡まれているようにも見えた。
「君はだい……」
とレジアスが言いかけたところで、メイリアがいきなり立ち上がった。
「私、帰る」
「はっ!」
「え?」
メイリアのいきなりの宣言にサレンスとレジアスの驚きの声が重なる。
「メイリア、具合悪いの?」
すかさず、小さな少年が彼女をいたわるように尋ねるが、メイリアは懐柔されなかった。
「そうじゃないけど、でも、帰る」
頑強に繰り返す彼女を見て、あきらめたかレジアスが言う。
「わかった。送るから」
しかし、その言葉はなぜかメイリアの逆鱗に触れたようだった。細い顎を上げ、叫ぶ。
「いい、一人で帰る。あなたは大事なサレンス様の面倒見ていたらいいじゃないっ!」
言い捨てると、メイリアは闇雲に駆け出していった。
背後の不穏な気配に、ぎぎぎと音を立てそうなくらいぎごちない仕草でクレヴァスが振り向くと、そこになにやらたくさん食べ物を載せた盆を抱えたレジアスが居た。
「あっ、別に」
彼を睨みおろす蒼い瞳には怒りをはらんだ冷たい光が浮かんでいる。
とっさにごまかし笑いを浮かべたが、それが消える風はない。
まだ15歳にしかならず、当然力も解放されず、華奢な少年でしかないクレヴァスにとっては、18歳とはいえすでにたくましい体つきのレジアスは大人の男に見える。しかも、何やら怒りを買ってしまったようだった。
さすがに対抗はとてもできそうになかった。
「あ、俺いくわ。じゃあな、メイリア」
「ええ」
顔を引きつらせながら去っていくクレヴァス。
しかし、レジアスは彼を無視して、小さな少年の顔を覗き込む。
「だいじょうぶですか、サレンス様。今、殴られてなかったですか?」
すでに纏っていた不穏な気配は消え去っていたが、彼の蒼い瞳はいまだ怒りをはらんでいる。彼の視界からは、サレンスが少年に手荒に小突かれたように見えたのだった。
怪我でもさせられていれば、報復する気満々である
「え? 殴られてなんかないよ。レジアス、心配性だな」
にっこりと笑うサレンスに安心して、今度は彼の視線がメイリアに向く。
メイリアは少年に絡まれているようにも見えた。
「君はだい……」
とレジアスが言いかけたところで、メイリアがいきなり立ち上がった。
「私、帰る」
「はっ!」
「え?」
メイリアのいきなりの宣言にサレンスとレジアスの驚きの声が重なる。
「メイリア、具合悪いの?」
すかさず、小さな少年が彼女をいたわるように尋ねるが、メイリアは懐柔されなかった。
「そうじゃないけど、でも、帰る」
頑強に繰り返す彼女を見て、あきらめたかレジアスが言う。
「わかった。送るから」
しかし、その言葉はなぜかメイリアの逆鱗に触れたようだった。細い顎を上げ、叫ぶ。
「いい、一人で帰る。あなたは大事なサレンス様の面倒見ていたらいいじゃないっ!」
言い捨てると、メイリアは闇雲に駆け出していった。

