王国ファンタジア【氷炎の民】外伝~新生~

(げっ、サレンス様かよ)

 彼もこの可愛らしい少年の正体を知っている。知らないのは当の本人くらいだ。
 クレヴァスとしてはあまり係わり合いになりたくはない。しかし、目の前のメイリアをあきらめもできなかった。

「子どもはおとなしくしてな」

 こつんと額を小突くと、怯みもせず蒼い瞳が見上げてくる。

「ダメだよ。メイリアはレジアスのだもん」
「サリィちゃんっ!」

 子どもの直截な言葉にメイリアが真っ赤になり、クレヴァスは一瞬息を飲み笑い出す。

「おもしれぇ」

 腹を抱えて笑う彼にサレンスが頬を膨らませる。

「何がそんなにおもしろい」

 クレヴァスの背後から酷く冷たい声がかかった。