「そのときはね、“ありがとう”しか言えなかった。でも一輝君は“送ってく”って言ってくれてね…。でもあたしは家に帰りたくなかったから“いい”って言ってその場をカタカタ震える足で去ったの。」
「…それで?」
「うん。それでね…」
そう美央が語ろうとしたときだった。
ガラッ。
「あなたたちいつまで教室にいるの?早く帰んなさい!」
(ゲッ。担任の福田だ…。)
「「はぁ~い」」
あたしと美央は“帰ろう”と言ってから1時間もこうして机のイスに座って話していたのだ。
「帰るか…。」
そう切り出したのは美央。
「んだな!」
「ついつい熱く一輝君との出会いを話してしまったわ♪」
「あたしもっと聞きた~い!」
「まぁ、その気になったらね」
「えぇ~~~~!!」
あたしと美央は他愛もない話をしながら教室を出た。