クルーエル戦争と呼ばれる大戦は、両国間の和平交渉により終結。互いに大きな損害を被るのみの結果となった。

 それから五年経った今でも、戦いの傷跡は未だ癒えきらぬ。

 傷だけではない。大戦による被害から生まれた憎しみも、まだ……癒えぬ。

 東の大国アルトリア。新しく修繕された街道を歩く青年、カイル=ディランも戦乱の被害者だ。

 当時十二歳だった彼は両親を無くし、アルトリア軍の軍人であるアレクセイ=ディランに引き取られ、養子となった。

 カイルには二つ下の妹もいたのだが、戦乱のゴタゴタに巻き込まれ、行方不明。町を焼いた激しい爆撃を思えば、生きている可能性は限りなく低いだろう。

 カイルは一振りの長剣を腰に携え、アルトリアの町を歩く。

 目的は町のパトロール。アレクセイに引き取られた後、義父と同じ軍人となったカイルの主な仕事だ。

 アレクセイ=ディランと言えば、先の大戦にて先頭に立って小隊を指揮した英雄。当然そのアレクセイに仕込まれたカイルは剣の腕がたつ。

 とはいえ、普通ならばまだ学校に通っているような年齢であるカイルが人を動かせるような地位に立つことなどできるはずもなく、一応その剣の腕を買われて悪党退治という名の雑用をこなす毎日を送っている。