「…俺たちの立場は、一歩間違えれば誤った道にまっしぐらだ」
自嘲するように笑う池田に、あたしは曖昧に笑い返した。
池田の、言う通りだったから。
少しだけ裕福で、少しだけ人の上に立っている。
それだけで人は、簡単に大切なことを忘れてしまう。
「正しい道を歩むことを望みすぎて、俺は道を間違えてたんだな」
池田は、遠くにいた自分の両親を見つめた。
「完璧を求めた…俺の負けだ」
池田はあたしに向き直ると、少し意地悪く笑う。
「お前も大変だな、咲良」
「まぁね。お節介な世話係がいるから、あんたより大変よ?」
「お嬢様…」
柳の口元がひきつっているのを無視して、あたしは笑った。
「…でも、たまにはそんな召し使いがいるのもいいわ」
「はい?」
「退屈しないから」
柳が来てから、鬱陶しいし邪魔だったけど…楽しかった、って言えるかもしれない。

