「柳、許すからはなして…」


「嫌だ」


ぎゅうっと、柳の腕に力が籠る。


これ以上抱きしめられたら、あたしの心臓は爆発するかもしれない。


「…俺、咲良には本当に感謝してんだ」


「え?」


あたしの後ろにいる柳の表情は、前からじゃ見えない。


あたしは黙って、次の言葉を待った。


「…樹里亜とも、なんとか仲直りできたし、やっと前に進むこともできた」


「………」


「咲良がいてくれたから、俺は今ここにいれるんだ」


あたしは柳の腕をそっとほどくと、柳と向き直った。


少しだけ眉を下げている大好きな人に、微笑みかける。


「…あたしも一緒だよ。柳がいてくれたから、あたしも今ここにいれるの」


「咲良…」


今度は真正面から、あたしから柳を抱きしめる。


厚い胸板だとか、ごつごつした骨格だとか、男の人だと実感することで、さらに鼓動は増す。