「…よくやった」


ポン、ポンと優しく頭を撫でられ、安心感に包まれる。


ああ。あたし、この優しい手が好きだ。


そんなことを思っていると、唇に柔らかい何かが触れた。


「ご褒美。…なんて、な」


それがキスだと、何となく頭で理解する。


あたし…誰かにキスされた。


誰?王子様…?



沈黙が、この空間を支配した。


けど不思議と、安心できる。


この感じを、あたしは知ってる―――…



規則的に頭を撫でる手の動きが、ピタリと止まった。


…嫌だ。夢なら、覚めないで…。



あたしの願いとは裏腹に、誰かの気配が遠退いた。


同時に、身体の温度がヒヤリと下がる。





「―――サヨナラだ。咲良」





遠くで呟かれた声は、まるで耳元で囁かれたように聞こえた。



―――きっと魔法が、解けたんだ…